
Jus' Friends / As One
漆黒のグルーヴに祈りが差し込む、NY Deep Houseの聖歌。
NY Deep Houseの核心を刻んだアンダーグラウンド・クラシック
1992年、NYのアンダーグラウンドが最も熱を帯びていた時代に、ひっそりと、しかし確実にフロアのココロを掴んだ1枚があります。それが今回レコメンドする Jus' Friends / As One。プロデュースを手がけたのはNY Houseシーンを代表するBobby Konders、そしてヴォーカルにはChicago Houseの伝説的シンガーRobert Owensを迎えています。Massive BのカタログMB-002という事実だけでも、この作品が90年代初頭NY Deep Houseの核心に触れる重要作であるコトが解ります。当時の派手なヒットチャートとは距離を置きながらも、本物を知るDJ達によって長く愛され続けてきた、まさにアンダーグラウンド・クラシックと呼ぶべき1枚ですね。
闇と光が共存するBobby Kondersのサウンド・デザイン
イントロはムダを削ぎ落としたリズムマシンの硬質なビートから始まります…。キックはタイトでソリッド、そこに這うように絡みつく重低音のベースライン。フロアの空気を一瞬で引き締める緊張感がヒシヒシと伝わってきますね。そしてそのダークなボトムの上に、驚くほどエレガントなピアノリフと軽快なホーンのフレーズが差し込む展開へ…。この「硬」と「柔」、「闇」と「光」のコントラストこそが本作最大の魅力でしょう。Bobby Kondersならではのダビーな感覚とDeep Houseの美学が絶妙なバランスで融合し、シンプルでありながら何度聴いても引き込まれる奥深いグルーヴを生み出しています。
Robert Owensが歌う祈りにも似たメッセージ
そしてRobert Owensの声が現れる…。孤独、切実さ、そして祈りにも似たニュアンスを帯びたそのヴォーカルは、「As One=ひとつになる」というメッセージを、単なるラブソングではなく精神的な結束の物語へと昇華させています。彼の声がのった瞬間、トラックはただのDeep Houseではなく、魂を揺さぶる「聖歌」へと変わってゆきます。派手な歌唱ではなく、感情を静かに滲ませるRobert Owensだからこそ、この作品に宿る精神性がより強くリスナーへと伝わってくるのです。
Dub Mixが描く音の深淵
ブレイクではBobby Kondersらしい暗黒のキーボードワークが冴え渡り、エコーとディレイが深い霧のように空間を覆います。そして再びビートが戻る瞬間、フロアは一段と深い没入へと引き込まれる…。当時のNYクラブシーンでは、DJたちのセットの中でジワジワと存在感を放ち、早朝のフロアを支配していたタイプの楽曲でした。さらに特筆すべきはカップリングの As One (Remix Dub)。オリジナルの精神性を継承しながら、ヴォーカルを断片化し、エコーとディレイの霧の中に再構築したDub Versionは、まさに「音の中に溶ける」トリップ体験を味わわせてくれます。
アナログでこそ伝わるNY Deep Houseの精神性
Bobby Kondersのダビーな感性が濃密に反映されたサウンドは、レコードで体感するコトで初めてその立体的な奥行きが浮かび上がります。音溝から立ち上る低域の厚み、空間に広がるエフェクト、そしてRobert Owensの繊細なヴォーカルが織りなす世界観は、デジタルでは味わいきれない魅力があります。盤面に針を落とせば静かに、しかし確実に深みに引き込まれる。90年代初頭NY Deep Houseの精神性を封じ込めた、持っていて損のない12インチシングルです。フロアでも自宅でも、今なお色褪せない1枚です。


